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フィルターの種類とそれぞれの役割

2019/5/21

フィルムカメラ、特にスライド用フィルム(ポジフィルム、リバーサルフィルム)では、
現像からプリントまでの処理の中で色合いを調節する術が用意されていません。

スライド用フィルムでの撮影の際には色のついたフィルターを使って色補正を行ないます。
このため、デジタルカメラ登場以前のフィルムカメラの時代には、フィルターの使われる割合がデジタルカメラが主流となった今とはかなり異なっていました。

デジタルカメラではオートホワイトバランスが非常に高性能になった関係で、色合い調整用のフィルターの役割の大きさが相対的に低下しました。

このあたりの事情も含め、フィルターの種類と役割、いわゆるフィルターワークについて説明します。

偏光フィルター

DSC_0099
デジタルカメラではこのフィルターを利用するのがフィルターワークのメインになったかもしれません。

ガラスや水面の反射を抑えて写りをすっきりさせたり、空気中のチリよって散乱された光の影響を減らすことで青空の明るさを落とし、
結果的に青空の色をより深い色合いで写し取ることが可能になります。

また、いろいろなものの反射も抑えることができますので、被写体本来の色を引き出しやすくなります。
反射が大きくなっていると色合いが淡い方向に振れるケースが多く、色彩のコントラストが低下しがちです。
こういった際には適度に偏光フィルターを利かせることで、被写体の反射を抑え本来の色を引き出しやすくなります。

ただ、偏光フィルターの効果を利かせすぎると太陽の日差しの強さが感じられにくい写真になります。
真夏に撮ったはずの写真が、日差しの雰囲気としては春や秋の雰囲気に変化してしまうケースもあります。

青空の色も、偏光フィルターを最強で働かせると色合いが濃くなりすぎ、紺や群青色の空に変化してしまうことがあります。
そういった色合いが好みの方もいらっしゃるでしょうし、写真の表現の一つとしてありうる構成ではありますが、
多くの場合、そのような写真の仕上がりでは日本の空の雰囲気が失われます。

こちらの目的で利用する場合にも、「ほどほど」の利かせ具合に抑えるのが偏光フィルターの上手な使い方になります。

PLフィルター

もともとの偏光フィルターは「円偏光」ではない偏光フィルターで、マニュアルフォーカスのカメラではこちらが使われていました。

フィルターの効き具合という観点では特に違いはありませんが、
オートフォーカス(AF)の一眼レフではAF用の光学系に光を導くためにメインミラーがハーフミラーとなっています。

直線偏光の偏光フィルターではフィルターの種類や角度によってハーフミラーを通過/反射する光の量が変わってしまいます。
このため、自動露出(AE)用の光学系に導かれる光の量が変化してしまうため、カメラのAEが正しく働かなくなります。
これを防ぐために次の見出しにもある円偏光フィルターが作られ、今はそちらがメインで利用されるようになりました。

AEセンサーなどの経路にハーフミラーを含まないミラーレスカメラでは、円偏光フィルターではない偏光フィルターでもきちんと使用可能なはずですが、
今は偏光フィルターといえば円偏光フィルターとなっていますので、試すチャンスはあまりないかもしれません。

PL-Cフィルター

オートフォーカス一眼レフ登場あたりから使われ始めた偏光フィルターで、円偏光フィルター、サーキュラー偏光フィルターと呼ばれるフィルターです。
PL-Cフィルターなどといった形に略されます。

上にも書きましたが、今は偏光フィルターといえば、こちらのPL-Cフィルターのことを指すといってもよくなっていると思います。

偏光フィルターの使い方

すでに使いこなしてらっしゃる方には常識だとは思いますが、偏光フィルターではフィルターを構成する偏光板を回転させることができます。

これによって被写体からの光の中の偏光の向きと、偏光フィルターが通しやすい偏光の向きをうまくマッチさせたり逆にズラすことで、
偏光した光を含む被写体からの光がフィルターを通過する割合を変化させてやります。

実際に偏光が目に見えるわけではないのでイメージはしにくいのですが、
被写体からの光の中の偏光とフィルターが通す偏光の向きとが直角になる向きにフィルターを回転させると
その被写体は一番暗い写り方になります。

撮影の際にはファインダーをよく見て、被写体の明るさの変化を確認しておく必要があります。
青空であれば、一番青空が暗くなる位置よりも少しどちらかに回転させて、利かせ具合をマイルドにするのが一般にはおすすめです。

プロテクトフィルター

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プロテクトフィルターは写真の写りに関しては「何もしてはいけない」フィルターです。
名前の通りにレンズの前玉を、破損や傷、ホコリから保護するためのフィルターになります。

このため無色透明で、光学的になんのパワーも持たない平面の素通しガラスとなっています。
「プロテクト」の効果を高めるために強化ガラスが使用されることが多くなりました。

NDフィルター

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NDフィルターのNDはNutral Densityの略で、かなり色の濃いグレー、というよりは真っ黒に近い色のフィルターです。
各波長の色を均等に通す、あるいは「減ずる」のがこのフィルターの理想です。

かなり濃いグレーの色がついていますので、レンズを通過する光の量を大幅に減らすことができます。
この、明るさを減らすこと自体を目的としたフィルターです。

明るい昼間に開放F値の小さなレンズで絞り開放付近の絞りを使いたい場合、
明るさやカメラのシャッターの性能によっては、最高速のシャッタースピードを使っても露出オーバーになってしまう場合があります。
このようなケースではNDフィルターでもともとの光の量を減らしててやれば、露出オーバーを回避できます。

また、水の流れを白い雲のようにブラしてしまうには思い切り遅いシャッタースピードを使う必要がありますが、
日中そういった写真を撮ろうとすると、絞りを一番絞り切ってもシャッタースピードが十分に遅くならない場合があります。
こういった時にはNDフィルターでレンズに入る光を減らしてやることで対応ができるようになります。

特殊効果フィルター

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写真の描画の上で特殊な効果を出すためのフィルターもいくつか存在しています。
そのうちで代表的な二つを取り上げます。

クロスラインフィルター

クロスラインフィルターは、強い点光源から何本かの光条が出る写真の撮れるフィルターです。
夜景などで画面を華やかにする効果があります。

星景写真など、星の写真を写す際にも有効に利用できます。

ソフトフォーカスフィルター

ピントの合った部分まで含めて、すこし像を滲ませて柔らかなイメージを作るフィルターです。
雰囲気のあるポートレイトを撮影するためなどに利用します。

色温度変換フィルター

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冒頭でも書きましたが、スライド用フィルムでは光の色合いによる色調の変化を補正するために、このフィルターを利用します。

アンバー

オレンジとか茶色っぽい色のついたフィルターです。

曇りの日や日陰など色温度が高くなるシチュエーションで、色合いをニュートラルなものに近づけるために利用します。
実質的に光の色温度を下げる効果のあるフィルターです。

対応する色温度によって何種類かの濃さのフィルターが存在します。

シアン

こちらは水色の色合いのついたフィルターです。
午後2時以降の少し太陽の光の色が黄色みを増してきた頃など、被写体が黄色っぽくなりがちなシーンでの写真の色合いをニュートラルに補正するためのフィルターです。
太陽の光の色合いの変化に応じて、こちらも何種類かの濃さの違うフィルターがあります。

タングステン対応

白熱灯下での撮影で、色の補正を行なうためのフィルターです。
昼間の太陽の光の下で撮影することを前提として作られたフィルムで使用します。

ちなみに、太陽の光の中での撮影を前提にした色作りのフィルムは「デイライトタイプ」と呼ばれます。
元々のフィルムの発色の傾向を変えて、白熱灯の下で撮影しても、白が白として再現されるタイプのフィルムもあります。
こちらは「タングステンタイプ」のフィルムと称されます。

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