プロが教える桜の撮影テクニック!3種の光を操ってワンランク上の写真を撮ろう!
2016/2/24
プロカメラマンの川窪 葉子さんに記事をご寄稿頂きました!
川窪さんの作品が見られるHPはこちら↓
冬ももうじき終わりを迎え、いよいよ春の季節がやってきます。
春の被写体と言えばやっぱり「桜」。
今シーズンは、昨年の11月から気温が高い状態が続き、記録的な暖冬となりました。
暖冬の年は桜の花芽が「休眠」という状態から目覚めにくく、開花は平年よりも少し遅くなるそうです。
日本で一番早い桜の開花予想は福岡県の3月25日。
開花までの間に、今回のコラムを読んで、桜を被写体にした撮影時のポイントをぜひ身につけていただければと思います。
以下本文です。
桜の季節到来! 撮影のポイントとテクニック
柔らかな光、漂う風に春の香りを感じるようになり、梅の花も見頃を迎えました。これからは桜の季節が訪れますね。一瞬に花開き、あっという間に散ってしまう桜。短いシャッターチャンスで、美しく収めたいところです。
週休二日制の会社勤めの方は、休日が勝負。ただ、桜の名所に出かけるのも限度があり、天気に恵まれるとも限りません。名所に出かけなくても、近所の花や買ってきて室内でも、撮影可能なのが花の撮影ともいえます。
撮影場所: 九段下・千鳥ヶ淵
撮影機材: FUJIFILM X30
撮影設定: マニュアル / ISO 200 / F値2.8 / 露出時間1/210秒 / WB AUTO
大混雑のためバリアングルで手を上げて撮影。小型のコンデジのため女性でも楽に撮影が可能。
花の撮影は色々とあります。名所では、どこで撮影したかわかるように全体を俯瞰で写すことが多いのではないでしょうか。もちろんそれでも良いのですが、記念撮影の印象になってしまうので、今年はさらに違った方法で、さまざまな表情の桜を切り取ってみてはいかがでしょうか。
では、どのような撮影方法があるのか、確認してみましょう。
花の撮影に大切なのは「光」と「距離」
撮影で構図とともに大切なのは「光」です。英語で写真をフォトグラフやフォトグラフィー、写真家をフォトグラファーと言いますが、ラテン語のphoto=光、graph=画く、が語源になっています。写真は光で描く「光画」です。つまりフォトグラファーは、光を操りながら、光で描く人なのですね。この光を上手に利用すれば、自分のイメージに合った撮影ができるというわけです。
光を取りこむ角度や露光をコントロールすることで、同じ被写体でもアンダーで落ち着いた雰囲気に、ハイキーでふんわりとなど、まったく違った印象になります。
まずは、3種類の光を利用した撮影方法をみてみましょう。
【順光】 花の形と色を、くっきりと鮮明に
太陽の光が直接、当たるため、くっきりと鮮明に発色します。被写体と背景との輝度の差が少なくなるので、露出を合わせるのも難しくありません。
【透過光】 花の形と色を、幻想的に
花びらを透かすことで、透明感が出た幻想的な雰囲気になります。夜ならば街灯の光をうまく利用しながら撮影するとより、幻想的に仕上がります。
注意しなければならないのが、露出オーバーになってしまうこと。ダイナミックレンジを400%、採光をスポットにして花びらに焦点を合わして撮影します。
あえてオーバー気味に撮影してハイキー風に仕上げるもあり。ただしあくまでも主題がわかるように撮影するように注意が必要です。
【逆光】 花の形をシルエットにして、芸術的に
背景の明るさに露出を合わせ、あえて花をシルエットに撮影するとアーティスティックな仕上がりになります。花をしっかりと写したい場合は、フラッシュで日中シンクロ撮影する方法もあります
せひ、光を上手く利用しながら、撮影してみてください。
撮影場所: 上野恩賜公園
撮影機材: カメラFUJIFILM X-T10 / レンズFUJINON XC50-230mmF5.6-6.7OIS
撮影設定: 絞り優先 / ISO 3200 / F値6.7 / 露出時間1/9秒 / WB AUTO
望遠レンズで撮影。夜のためISO感度を上げて、女子好みのエアリー調に仕上げるため、フィルムシュミレーションをハイキー、露出とハイライト最大、シャドウとカラー、シャープネス最少、ダイナミックレンジ400%に。ホワイトバランスはエアリー調のシアン寄りにAUTO設定からマニュアルで青緑よりに設定。左方向からの街灯の光を味方につけて、ふんわりとした雰囲気に。
桜の主役を活かす、脇役にもこだわる
ドラマには主役だけではなく、脇役がいます。脇役が主役を引き立てたり、または補ったり、主役がいまいちでも脇を固める役者が素晴らしいと見応えのあるドラマになったりします。
写真も同じだといえます。桜を撮影する際、桜の花ばかりに気をとられがちですが、さらに桜を美しく見せるためには、引き立てる脇役にもこだわってみてください。
背景の色次第で全体の雰囲気が変わるように、光のボケをプラスする、池や水たまりなどの水面やガラス窓に映り込ませる、他の花と一緒に撮る、人や鳥などの動物を入れてみる、花吹雪と一緒に撮る、散った花びらを撮る、など色々な脇役と組み合わせることで、桜がより一層美しくなります。
撮影場所: 皇居東御苑
撮影機材: カメラFUJIFILM X-T10 / レンズFUJINON XF23mmF1.4R
撮影設定: 絞り優先 / ISO 200 / F値2.8 / 露出時間1/210秒 / WB AUTO
主役は池に映りこんだ桜。鯉が良いタイミングで来た際に、桜に焦点を合わせながら撮影。露出は反射で白飛びしないように調整しながらアンダーに設定。
お花見シーズンになると、特に桜の名所は混雑して、撮影も難しくなります。たまに見受けられるのが三脚禁止の場所での三脚利用や、禁止区域の立ち入り、枝や花に触れる、などなど。我先にとルールを守らず、周囲に迷惑をかけてまで撮影しても良い写真は撮れません。
写真は「写心」と言われているように、ファインダー越しの景色を心で見て、カメラで形に残しています。また、限られた条件でも、美しく撮れることが上達する秘訣です。美しい心で、美しいものを、美しく、ぜひ撮影してください。
<写真・文/川窪葉子>