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ホワイトバランスと色温度

2016/1/28

デジタルカメラで写真の色調の調整を考える上で重要な概念となるのが、ホワイトバランスと色温度です。この2つは密接な関係があり、写真の色合いを考えたり調節を行なう上では切り離すことが出来ません。

通常のカメラ任せの撮影では、カメラが撮影した画像データの色々な要素から演算を行って色の調整を行っています。ですが、その結果では満足のいく色味で仕上がらなかった場合には、これらの要素を人間が考えて色の調整を行なう必要が出てきます。

今回は、この2つの要素を少し詳しく説明していきます。

黒体輻射と色温度

色温度は光の色合いを表す概念です。色温度が低ければ光の色合いは赤っぽくなり、色温度が高ければ光の色合いは青側に傾きます。

色温度の単位は絶対温度を表すK(ケルビン)となっていますが、この単位がついているところには色温度の由来が関係しています。ちょっと面倒なお話になりますが、色温度の大本の定義は物理学上の現象と密接に結びついています。

説明に必要になるのは、周りからの光を一切反射しない仮想の物体である「黒体」という概念です。実在するものの中では、太陽などの恒星はほぼ黒体と考えていいと言われています。

この黒体の温度がどんどん上がっていくと、黒体自体が電磁波を発するようになります。

温度が低いうちは電波から始まって、温度が高温になると赤外線から可視光に、可視光からさらに紫外線へと色が変わっていきます。もっとどんどん温度が上がるとX線やガンマ線までが出てくるようになりますが、その部分は色温度とは別のお話ですので、今回は省いて可視光の部分のみのお話をします。

上でも触れたように、物体の温度が上がっていくとそこから出る光の色合いは赤から黄色、黄色から青っぽい色に変化ししていきます。このように高温の物体から出る光の波長の分布のうち、もっとも強度が高い部分の光の色を、光を発している物体の絶対温度を使って表すようにしたのが色温度です。

定義の方はちょっと面倒ですので、実用上は色温度の数字が高くなると光の色合いは青っぽくなっていく、ということをつかんでいればOKです。

ちなみに、夏の昼間の太陽の光の色は5500Kぐらいの色温度です。夕焼け時間になると、これが3000K代まで下がります。また、パソコンのディスプレイの白は、一般的には6500K程度に調整されています。

実際のところ、太陽の光の色は思いの外黄色っぽいものなのです。人間の感覚としてすぐに白と感じられる色合いは、実は太陽の光の色よりもかなり色温度の高い色です。

写真の色のバランスは、フィルム時代から太陽の光の色を基準に作られており、5500K程度の光線の元でカラーバランスが適切になるような調整が行なわれます。

ホワイトバランス

ホワイトバランスとは、一言で言うと、色々な色合いの光の元で白を白と表現するための調整です。言葉を使う場合には「ホワイトバランスを取る」といった表現をします。

現在のデジタルカメラにも残っている方法ですが、かつてのビデオカメラでは真っ白な紙を撮影して、それが真っ白に見えるように調整することでホワイトバランスを取る方法が使われてきました。

今でも厳密なホワイトバランスを取るには、同じ方法がもっとも信頼性が高く正確だと思われます。

オートホワイトバランス

今のすべてのデジタルカメラにはこの機能が備わっています。

オートホワイトバランスでは、真っ白の何かを撮影しなくても通常の被写体を普通に撮影するだけでその画像データから高度な演算処理を行って、その時々、最適と思われる色バランスを設定してくれます。

かつては光の色合いだけを測るために、イメージセンサーの他に「外光センサー」を備えたカメラも存在しましたが、今では映像エンジンの高性能・高機能化により、イメージセンサーからのデータだけできわめて正確なホワイトバランス調整が可能になっています。

ただ実際の画像生成時には、オートホワイトバランス機能と同時にカメラの色合いコントロール機能が働いていますので、単純な光の色温度に合わせた調整のみではなく、写真の色合い全体に調整がかかることになります。

これらの調整によって今のデジタルカメラは、通常のシーンであれば、おそらく9割以上の人がきれいと思える色合いの画像を自動で生成してくれます。

プリセットホワイトバランス

非常に高性能になった現在のデジカメのオートホワイトバランス機能ですが、きわめて難しい光の条件下では、期待した色合いに写真が仕上がらない場合もあります。

また、その時々の光の雰囲気を残すために、あえてオートホワイトバランスを切りたいケースもあります。

こう言った場合には、あらかじめいくつかのシーンに合わせて設定済みの色バランスを使うことが出来ます。この設定済みの色バランスをプリセットホワイトバランスと呼びます。

また、写真の表現を変化させるために特徴的な色合いを作り出したり、色合いを強調するためにあえてそのシーンとはマッチしない色合いの設定を使う、といった使い方も出来ます。色調整のためのフィルターワークを代行できるのです。

例えば、夕焼けの色合いを強調するために、曇りのプリセットホワイトバランスのポジションを使うといったやり方があります。

ホワイトバランス:オートの場合IMG_3387_2

ホワイトバランス:日陰の場合IMG_3387_3

ホワイトバランス:白熱灯の場合IMG_3387_4

色温度指定のホワイトバランス設定

ホワイトバランス調整を、直接色温度を指定して行うことが可能になっているデジタルカメラもあります。

この調整方法では色温度を高く設定すると、写真は実際に目で見た色合いよりも「赤っぽく」仕上がります。逆に色温度を低く設定すると、目で見た色合いよりも「青っぽい」写真が仕上がります。

今のデジタルカメラのオートホワイトバランスでは、ある程度以上に光の色合いが赤みがかっているとカメラが判断すると、ホワイトバランスの調整がカット、あるいは制限され、そのときの光の色味を残す仕上がりになります。これは、光の色合いがある程度以上に赤いケースは、夕景か白熱灯下の撮影だろうという事前の分析による設定です。

そのようなかなり光が赤っぽい条件の下でも白を白として写したい場合には、色温度指定でホワイトバランス調整を行うか、プリセットホワイトバランスの白熱灯ポジションなどを利用することになります。

マニュアルホワイトバランス

マニュアルホワイトバランスは、真っ白な被写体(例えば白純度の高い紙)を用意してそれを撮影、撮影後にカメラに分析を行わせることで、その時々の光に合わせたホワイトバランス調整をより精密に行わせる方法です。

一般的には、オートホワイトバランスよりもより精度の高いホワイトバランス調整が可能です。

より高度な色調整

従来のカメラでは色調整は色温度による調整のみのカメラが多かったのですが、今はより高度な色調整も可能になりました。フォトレタッチソフトでの高度な色調整のように色相や彩度の複数の軸を元に、かなり高度な調整がカメラ単体で行える機種が増えています。

ここまで来るともはやホワイトバランス云々と言うよりは、詳細で高度なフィルターワークの代用機能と呼んだ方が良いでしょう。

時間とともに変化する色温度

朝焼け、夕焼けの時間帯ははっきりと光の色合いが赤に傾いていることが理解できると思いますが、それ以外の時間帯も少しずつ光の色合いは変化しています。

本当にカラーバランスに影響を及ぼさない太陽の光の色合いになっているのは、夏の日の10時から14時ぐらいの間だけです。真夏であってもその時間帯を外れると、少しずつ太陽の光の色はより黄色に変化していきます。

ある程度まではデジタルカメラならばオートホワイトバランスでかなり良好に色補正が行われますが、マゼンタなど黄色みが混じると色合いに濁りの生じる色合いの被写体に関しては、できる限り条件の良い時間帯に撮影する方が結果は良くなりやすくなっています。

天候によって変化する色温度

時間帯だけではなく、天候によっても太陽の光の色温度は変化します。曇りの日や雨の日など、厚い雲を通すと太陽の光の色は青に傾きます。

こちらの条件でも今のデジタルカメラのオートホワイトバランスでは概ね良好な色を再現してくれますが、やはり微妙な部分で黄色や赤系の色の冴えが出にくい光線条件になります。

フィルターワークの代わりとしての色温度調整

fiilter
フィルムカメラ時代にはポジフィルムでのホワイトバランス、色温度調整は、マゼンタやシアンの色の付いたフィルターを利用することで行なっていました。これらの操作が「フィルターワーク」のかなりの割合を占める作業だったと言えます。

ですがデジタルカメラ時代になってからは、ホワイトバランスはカメラに任せても概ねOKとなり、それ以外の作品作りのための色の傾向の調整の操作も、カメラ本体だけでも完結させられるようになりました。つまり、フィルターワークのかなりの部分は、カメラ本体で済ませられるようになっています。

従来のフィルターワークのうちカメラだけで完結できないのは、偏光フィルターなど一部の効果を残すのみとなっています。

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