街角の色と影を50mmで切り取る
街で写真を撮るとき、目を引くのは有名な建物や整った風景だけではありません。
色あせた看板、歩道に置かれたカラーコーン、通りすがりの人が落とす影。見慣れたものにも、レンズを向けると違う表情が現れます。
今回は、Leica M(Typ 240)とSUMMICRON-M 50mm f/2 E39 第3世代を組み合わせた街角スナップのレビューです。
作例を通して、50mmという画角がとらえた色、距離感、光と影を見ていきます。

Leica M(Typ 240)と第3世代SUMMICRONで、日常を切り取る
Leica M(Typ 240)は、光学式レンジファインダーを備えたデジタルカメラ。撮影者が手動でピントを合わせるM型ライカらしい仕組みを残しながら、ライブビューにも対応しています。
組み合わせたSUMMICRON-M 50mm f/2の第3世代は、1969年から1979年にかけて製造されたライカMマウントの単焦点レンズです。
今回の50mmでは、広く写し込みたいときは一歩下がり、細部を見せたいときは近づくなど、立ち位置によって写真の印象が変わります。
年代の異なるデジタルボディとレンズを組み合わせて、今の街を記録できるのもMシステムの面白さです。
ピントの合った看板と、ぼけた街並み
最初の一枚は、赤と黄色が印象的な「放置禁止区域」の警告板。
手前の文字や錆びた金属の部分に視線が集まり、奥の道路や建物は大きくぼけています。背景の情報が整理されることで、普段は通り過ぎてしまう標識が写真の主役になっています。

赤と黄色の警告板。奥の街並みがぼけ、文字と金属の質感が際立つ。
「駐車お断り」と書かれた古い看板も、似た発見を感じさせる作例です。
塗装の剥がれや錆びた支柱が見える一方、奥の店内は柔らかくぼけています。右側の鮮やかな青い壁と、手前の赤いコーンが画面に色のアクセントを添えています。

使い込まれた看板の質感と、青い壁との色の対比。
どちらも、被写体と背景との距離が画面の印象を左右する好例です。
開放F2まで使えるこのレンズでは、ピントを合わせる場所や絞りを変えて、背景の見せ方を考える楽しみがあります。
黄色、赤、緑。街の色がつくる構図
倒れた黄色い案内器具と、散らばる赤いコーン。
この作例では、整然とは並んでいない路上の様子を、鮮やかな色と斜めの線で見せています。
黄色い物体が画面の中央を横切り、コーンの赤が視線を周囲へ運びます。緑色の路面や白線までが、構図の一部になっています。

黄色い案内器具と赤いコーン。路面の緑や白線が鮮やかな色を引き立てる。
別の写真では、大きな赤いコーンが手前に立ち、その奥に青い清掃道具や閉じたシャッターが並びます。
物の配置だけでなく、コーンの大きさと奥の道具の小ささからも、前後の距離が伝わってきます。

路地に置かれたコーンと清掃道具。前景と背景の配置から奥行きが伝わる。
工事用の柵を写した写真では、黄色と赤のコーンが手前から奥へ繰り返し並び、緑の柵がそのリズムを受け止めています。
手前がぼけ、奥の柵に視線が向かう構成も印象的です。
特別な被写体を探さなくても、街にある色や線の組み合わせが写真になります。

繰り返し並ぶコーンと柵。色彩と遠近感が重なり合う街角の風景。
50mmのスナップで見つける、人と街の関係
宝くじ売り場の作例では、中央の窓口に手を伸ばす人と、その左右に座る人が一つの画面に収まっています。
小さな売り場を軸に、別々の時間を過ごす人たちが並んで見えるのが面白いところ。
背景の歩行者や通りも写り込み、街全体の気配が残っています。

宝くじ売り場を中心に、それぞれの時間を過ごす人々を切り取る。
黄色い服の子どもと、その肩を抱く大人を後ろから写した一枚は、ぐっと近い距離で切り取られています。
二人の姿が画面を大きく占めるため、周囲の往来は背景に退き、腕の動きや服の色が目に入ります。

黄色い服が目を引く一枚。二人の姿を大きくとらえ、周囲の街並みは背景へ。
同じ50mmでも、被写体との距離や画面に含める背景の量によって、場所を伝える写真にも、人物のしぐさを中心にした写真にもなります。
白黒写真で見えてくる、光と影の形
カラー写真では標識や服の色が視線を引きましたが、白黒写真では明暗と形がより前面に出てきます。
歩いている人を写した写真では、地面に長く伸びた影がもう一つの主役。
足の動きと影の向きが、静止画の中に一瞬の動きを残しています。

歩く人の足元と、地面に伸びる影。光の向きが画面の印象を決める。
階段を写した縦位置の一枚では、手すりがつくる斜めの影が画面の奥へと続いています。
明るい床と暗い通路、遠くにいる人々のシルエットが重なり、奥行きを感じさせます。
色がなくても、街には写真になる要素がいくつもあると気づかされます。

階段に落ちる規則的な影と人々のシルエット。縦位置の構図が奥行きを強調する。
ピントを合わせる時間も、写真の一部に
この組み合わせはオートフォーカスではなく、手動でピントを合わせて撮影します。
M(Typ 240)では光学ファインダー内の像を重ねて合わせる方法に加え、ライブビューの拡大表示やフォーカスピーキングも利用できます。
フォーカスピーキングとは、ピントが合っている部分を画面上で確認しやすくする補助機能です。
例えば標識の文字を主役にするならその文字に、人物と影を合わせて見せたいなら両者の位置関係に意識を向ける。
今回の作例は、ピントをどこに置くかだけでなく、何を画面に残すかを考えるきっかけにもなります。
街を歩く目が少し変わる組み合わせ
今回の作例に登場するのは、特別な撮影スポットばかりではありません。
使い込まれた看板、道端の器具、何気ない人の動き、地面に落ちる影。50mmで切り取ると、そうした日常の一部分に自然と視線が向かいます。
Leica M(Typ 240)と第3世代SUMMICRON-M 50mm f/2は、デジタルの記録性と、手動でピントや構図を選ぶ撮影方法を組み合わせられる機材です。
次に街を歩くときは、いつもなら見過ごしてしまう色や形にも目を向けてみたくなります。
Leica M(Typ 240)について
2012年に発表され、2013年に発売されたデジタルレンジファインダーカメラ。
有効約2400万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーを搭載し、ライカMマウントの交換レンズに対応しています。
光学式レンジファインダーを使ったマニュアルフォーカスを採用。ファインダー内で像を重ね合わせることで、被写体にピントを合わせます。
背面の3.0型液晶モニターを使ったライブビュー撮影にも対応。拡大表示やフォーカスピーキングを利用して、ピントを確認することもできます。
シャッタースピードは最速1/4000秒に対応。絞り優先AEやフルHD動画撮影機能も備えています。
幅・高さ・奥行:約138.6mm×80mm×42mm
重量:約680g(バッテリー込み・レンズを除く)
Leica SUMMICRON-M 50mm f/2 E39 第3世代(11817)について
1969年に登場し、1979年まで製造された、ライカMマウント用のマニュアルフォーカス単焦点レンズ。
焦点距離50mm、開放F値F2の標準レンズで、フィルター径は39mm(E39)。製品番号は11817です。
光学系は5群6枚で構成され、最短撮影距離は0.7m。距離環と絞り環を操作して、ピントと絞りを手動で設定します。
ブラック仕上げの鏡筒を採用し、レンズフードは別体式。後のモデルとは光学構成や鏡筒設計が異なり、SUMMICRON-M 50mmの歴史において独自の特徴を持つモデルです。
SUMMICRON-M 50mm f/2 E39 第3世代の商品一覧はこちら
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