雨の日の新宿には、晴れた日とはまた違った表情があります。
傘を差して歩く人々、雨に濡れた路面、店先からこぼれる明かり。普段なら見過ごしてしまう何気ない景色も、カメラを通して見ると魅力的な被写体になります。
今回使用したのは、フィルムレンジファインダーカメラ「Konica HEXAR RF」と、超広角レンズ「SUPER-ANGULON-M 21mm f/3.4」。
実はこの組み合わせ、レンズの構造上、内蔵露出計による測光がうまく機能しません。
そこで今回は、マニュアル露出で撮影することにしました。
とはいえ、一枚撮るたびに露出を調整するわけではありません。周囲の明るさを見ながらあらかじめ露出を決め、あとは構図とシャッターチャンスに集中します。
さらに、HEXAR RFには素早い自動巻き上げ機能が備わっているため、テンポよく撮影を続けられます。
今回は、この組み合わせで撮影した雨の新宿のモノクロ作例とともに、21mmの超広角レンズが持つ魅力や、実際の撮影で感じた楽しさをご紹介します。
Konica HEXAR RF|マニュアル撮影でも活きる、軽快な操作性

Konica HEXAR RFは、1999年にコニカから発売された35mmフィルム用レンジファインダーカメラです。
レンジファインダーとは、ファインダー内の二重像を重ね合わせてピントを調整する方式のこと。レンズを通した映像を直接見る一眼レフとは異なり、独立した光学ファインダーを使って撮影します。
HEXAR RFの特徴は、伝統的なレンジファインダーの操作感に、電子制御による便利な機能を組み合わせていることです。
最高1/4000秒のシャッター速度や絞り優先AEに加え、フィルムの自動巻き上げ・巻き戻し機能を搭載しています。
特に注目したいのが、内蔵モータードライブによる連続撮影機能。
連続撮影モードでは最高約2.5コマ/秒の撮影が可能です。
一般的な手動巻き上げのフィルムカメラでは、シャッターを切るたびに巻き上げレバーを操作する必要がありますが、HEXAR RFならその操作が不要です。
今回のようなストリートスナップでは、人物の動きや表情、街の中で生まれる一瞬の変化が大切になります。
そんな場面でも、巻き上げを気にせず次のシャッターを切れるため、撮影のリズムを保ちやすいのが魅力です。
マニュアルで撮る楽しさを残しながら、便利なところはカメラに任せられる。
そのバランスのよさが、HEXAR RFの大きな魅力だと感じました。
SUPER-ANGULON-M 21mm f/3.4|街の広がりを写すクラシックな超広角レンズ

SUPER-ANGULON-M 21mm f/3.4は、1963年に登場したライカMマウント用の超広角レンズです。
ドイツの光学メーカー、シュナイダー・クロイツナッハが製造を手がけ、4群8枚の光学構成を採用しています。
焦点距離21mmの魅力は、目の前の景色を広く写し込めること。
人物だけでなく、その周囲の建物や道路、街の奥行きまで一枚に収められるため、ストリートスナップにも面白いレンズです。
また、SUPER-ANGULONは歪曲収差を抑えた光学設計で知られ、建物の直線が多い都市風景でも、その特徴に注目したくなります。
一方で、画面の四隅に向かって緩やかに光量が落ちていく描写も、このレンズの個性のひとつです。
特にモノクロ写真では、こうした光量の変化が写真全体の雰囲気をつくる要素になります。
現代のレンズとは異なる設計思想を持つ一本ですが、今の街並みを撮っても、その魅力を十分に楽しめます。
作例レビュー|雨の新宿を21mmで撮り歩く
作例①|透明な傘と、街に差し込む光

最初の一枚は、透明な傘を差した人物を捉えたストリートスナップです。
画面中央には傘を差す人物。左側には明るい店舗の入口が広がり、右側には暗い建物の壁面が続いています。
明るい場所と暗い場所が大きく分かれた構図の中で、透明な傘と人物の姿が印象的に浮かび上がっています。
21mmという広い画角を使うことで、人物だけでなく、足元の路面や周囲の建物まで一緒に写し込むことができました。
写真の中に街の空間を残せるのが、超広角レンズの面白さです。
また、こうした明暗差の大きい場面では、露出の決め方によっても写真の印象が変わります。
今回はマニュアル露出なので、カメラ任せにはできません。
それでも、あらかじめ露出を決めておけば、あとは人物の位置や背景との重なりを見ながらシャッターを切ることができます。
自分で露出を決めるからこそ、構図を考える時間がより楽しく感じられました。
作例②|雨の新宿。行き交う人々の一瞬を捉える

続いては、新宿にある「食堂 長野屋」の前を行き交う人々を撮影した一枚です。
建物の外観や看板は比較的はっきりと写っている一方で、手前を歩く人々は流れるような輪郭で表現されています。
静止した建物と、絶えず動き続ける人々。
その対比によって、写真の中に時間の流れが感じられます。
こうした人通りの多い場所では、ほんの一瞬で構図が変わってしまいます。
人物が画面のどこに入るか、どのタイミングでシャッターを切るか。その判断が写真の印象を大きく左右します。
そこで活きてくるのが、HEXAR RFの自動巻き上げ機能です。
一枚撮影すると素早く次のコマへ巻き上がり、連続撮影モードを使えば続けてシャッターを切ることもできます。
巻き上げレバーを操作する時間が必要ないため、人の動きに合わせて撮影を続けやすいのが大きな利点です。
露出はある程度決めておき、あとは構図とタイミングに集中する。
マニュアル露出でありながら、軽快に撮り進められるのはHEXAR RFならではの魅力です。
作例③|街角のショーウインドー。光と影がつくる表情

最後の一枚は、新宿の街角にあるショーウインドーと看板を捉えた写真です。
画面左側は深い影に包まれ、右側には明るく照らされたガラス面が広がっています。
店頭に並ぶ看板やポスター、ガラスに映り込む光。
街中でよく見かける何気ない光景ですが、モノクロで切り取ることで、光と影の違いがより印象的に感じられます。
特に目を引くのは、暗い空間と明るいショーウインドーの対比です。
明るいガラス面の中に浮かぶ人物の写真と、手前に並んだ看板。その重なりが、画面に奥行きを生み出しています。
21mmの広い画角だからこそ、ひとつの被写体だけでなく、その周囲にある空間まで取り込むことができます。
また、SUPER-ANGULONの周辺光量落ちも、こうしたモノクロ撮影で注目したい特徴のひとつです。
画面全体を均一に明るく写すだけではない、クラシックなレンズならではの表現を楽しめます。
露出を決めたら、あとは構図に集中する。今回の撮影で感じた楽しさ
今回の撮影で特に印象に残ったのは、マニュアル露出とHEXAR RFの自動巻き上げが、意外なほど相性のよい組み合わせだったことです。
SUPER-ANGULON-M 21mm f/3.4は、レンズ後部が大きく突出した構造になっています。
そのため、HEXAR RFでは内蔵露出計による測光が正常に行えず、今回はマニュアル露出で撮影しました。
ただ、ストリートスナップでは、シャッターを切るたびに露出を細かく調整する必要はありません。
まずは周囲の明るさを見ながら、ある程度の露出を決めておく。明るさが大きく変わらなければ、その設定を基本に撮影を続けます。
そうすれば、撮影中に意識を向けられるのは、目の前の景色や人物の動き、そして構図です。
特に21mmのような広い画角では、画面の中に多くの情報が入ってきます。
どの位置に立つか、人物がどこを通るか、背景とどう重なるか。
そんなことを考えながら、シャッターを切るタイミングを探すのが面白いところです。
そして、この撮影スタイルを支えてくれるのがHEXAR RFの自動巻き上げです。
手動巻き上げのカメラでは、一枚撮影した後に巻き上げ操作が必要になりますが、HEXAR RFならその必要がありません。
さらに最高約2.5コマ/秒の連続撮影にも対応しているため、人物の動きに合わせてシャッターを切り続けることもできます。
一瞬の動きを逃したくないストリートスナップでは、この機能が大きなメリットになります。
露出は先に決めておき、あとは構図とシャッターチャンスに集中する。
すべてを自動にするのではなく、自分で操作したいところは自分で決め、便利な機能は積極的に活用する。
今回の組み合わせでは、そんな撮影の楽しさを改めて感じることができました。
測光が使えないことは確かに制約ですが、それによって撮影がつまらなくなるわけではありません。
むしろ、マニュアルで撮る楽しさと、HEXAR RFならではの軽快さの両方を味わえる、面白い組み合わせでした。
HEXAR RFでSUPER-ANGULON 21mmを使う際の注意点
今回のような組み合わせで撮影する場合、いくつか知っておきたいポイントがあります。
まず、HEXAR RFには21mm用のファインダー視野枠が搭載されていません。
内蔵ファインダーは28mm・35mm・50mm・75mm・90mm・135mmの視野枠に対応しているため、21mmの撮影範囲を正確に確認したい場合は、外付けの21mmビューファインダーが便利です。
また、SUPER-ANGULON-M 21mm f/3.4は、後玉がカメラ内部に大きく入り込む構造です。
この構造によってTTL測光が妨げられるため、今回のHEXAR RFではマニュアル露出で撮影しました。
さらに、古いレンズをほかのカメラに組み合わせる際には、レンズ後部がカメラ内部の部品と干渉しないかなど、事前に適合性を確認することも大切です。
こうした特徴を理解して使うことで、オールドレンズならではの撮影体験を楽しめます。
まとめ|マニュアルの楽しさと、自動巻き上げの快適さ
Konica HEXAR RFとSUPER-ANGULON-M 21mm f/3.4。
1990年代の日本製レンジファインダーカメラと、1960年代に登場したドイツ製超広角レンズの組み合わせです。
今回の撮影では、レンズとの組み合わせによって内蔵露出計がうまく使えないという制約がありました。
しかし、露出をあらかじめ決めてしまえば、あとは目の前の景色やシャッターチャンスに集中できます。
そして、シャッターを切ればHEXAR RFが素早くフィルムを巻き上げてくれるため、次の瞬間にも対応しやすい。
マニュアル露出で撮影する楽しさを残しながら、自動巻き上げの便利さもしっかりと活かせる。
それが今回、HEXAR RFを使っていて特に面白いと感じた部分でした。
フィルムカメラだからといって、必ずしも一枚一枚ゆっくり撮る必要はありません。
自分で露出を決め、構図を考え、目の前の瞬間に合わせてシャッターを切る。
そんな軽快な撮影スタイルも、フィルムカメラの楽しみ方のひとつです。
雨の新宿で出会った、傘を差す人物や行き交う人々、街角に差し込む光。
いつもの街にも、まだまだ写真に残したくなる瞬間があります。
ぜひお気に入りのカメラを持って、街を歩いてみてはいかがでしょうか。
今回使用したカメラとレンズ
Konica HEXAR RFについて
- 発売年:1999年
- 形式:35mmフィルムレンジファインダーカメラ
- マウント:コニカKMマウント
- 最高シャッター速度:1/4000秒
- 露出制御:絞り優先AE・マニュアル
- 連続撮影:最高約2.5コマ/秒
- フィルム給送:自動巻き上げ・自動巻き戻し
Leitz SUPER-ANGULON-M 21mm f/3.4について
- 登場年:1963年
- 焦点距離:21mm
- 開放F値:F3.4
- レンズ構成:4群8枚
- 画角:約92°
- マウント:ライカMマウント
- 製造:シュナイダー・クロイツナッハ
Leitz SUPER-ANGULON-M 21mm f/3.4の商品一覧はこちら
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