デジタルカメラにオールドレンズを組み合わせると、いつもの風景も少し違った表情を見せてくれます。
今回は、フルサイズミラーレスカメラ「SONY α7」と、旧ソ連で製造されたオールドレンズ「KMZ HELIOS 44M-4 58mm f/2」を組み合わせた作例をご紹介します。
木漏れ日を背景にしたポートレートから、何気ない街角や植物の写真まで。5枚の作例を通して、HELIOS 44M-4の特徴的なボケや、マニュアルフォーカスレンズならではの撮影表現を見ていきましょう。
SONY α7とHELIOS 44M-4で楽しむオールドレンズ撮影
HELIOS 44M-4は、焦点距離58mm、開放F値F2のマニュアルフォーカスレンズです。
標準レンズとして扱いやすい焦点距離で、人物を中心に撮影したり、街の一部分を切り取ったりと、さまざまな被写体に向き合えます。
今回組み合わせたSONY α7は、35mmフルサイズセンサーを搭載したミラーレスカメラ。M42マウントのHELIOS 44M-4も、対応するマウントアダプターを使用することで装着できます。
オールドレンズは、現代のレンズと比べて設計や描写傾向が異なるものも多く、背景のボケ方や光のにじみ方に違いが現れることがあります。
今回の作例でも、特に印象的なのが背景に広がる光の表現です。
木漏れ日が生み出す、HELIOS 44M-4の特徴的な玉ボケ
まずは、木々を背景に撮影されたポートレートをご覧ください。
人物の後ろには、白い光の輪がいくつも重なっています。木々の隙間から見える明るい光が大きくぼけ、背景全体に独特の模様を作り出しています。
一般的な丸い玉ボケとは少し異なり、光の輪郭がはっきり残っている部分や、形が崩れて重なっている部分が見られます。
背景が単純にぼやけるのではなく、写真の印象を決める要素になっているのが面白いところです。

人物を大きく捉えたポートレート。背景の木漏れ日が輪郭のある玉ボケとなって広がっています。
続いて、同じ人物を別の構図で捉えた写真です。
こちらは人物の上に広い空間を取り、背景の木々と光を大きく写し込んでいます。
画面上部に広がる玉ボケは、大きさも形もさまざま。ところどころに見える楕円状の光が、背景に動きを与えているように感じられます。
HELIOSシリーズは、背景が渦を巻くように見える「ぐるぐるボケ」で知られています。今回の写真でも、周辺の光点には流れるような形が見られます。
ただし、こうしたボケの現れ方は背景の光や撮影距離、絞りなどによって変わります。すべての場面で同じような表現になるわけではありません。

人物の表情と、上部に広がる木漏れ日のボケ。背景を大きく取り入れることで光の形が印象に残る一枚です。
ピントの位置で変わる、街角の奥行き
オールドレンズの面白さは、人物撮影だけに限りません。
次の写真では、画面左側に大きな木の幹があり、その奥に歩いている人物が写っています。
木の幹には樹皮の凹凸が見られる一方、奥の人物や道路は大きくぼけています。
手前と奥の見え方の違いによって、平面的な写真の中にも距離感が生まれています。
通りを歩く人を主役にするのではなく、手前の木に目が向く構図になっているのも印象的です。

手前の木の幹と、ぼけた背景の人物。奥行きのある街角の一場面です。
もう一枚は、街中の看板を捉えた写真です。
画面右側にある赤と白の看板は、文字まで読み取れる状態で写っています。一方、左側を歩く人物は大きくぼけており、輪郭や服装が分かる程度に表現されています。
同じ画面に写る被写体でも、ピントの合う位置によって目立ち方が大きく変わります。
看板の直線的な形と、ぼけた人物の柔らかな輪郭との対比も、この写真の見どころです。

看板の文字と、ぼけた通行人の対比。街の何気ない一角を切り取ったスナップです。
葉の質感と柔らかな背景を見比べる
続いては、緑の葉を近くから捉えた一枚です。
中央付近の明るい緑色の葉には光が当たり、表面のつやや葉脈が見て取れます。
その周囲には落ち着いた緑色の葉が広がり、奥の背景は滑らかにぼけています。
先ほどの人物写真では光の輪郭が強く目立っていましたが、こちらは比較的穏やかな背景です。
同じレンズでも、背景に何があるかによって、写真全体の印象が大きく変わることが分かります。
中央の明るい葉と周囲の暗い緑の対比も自然で、植物の小さな部分を切り取る楽しさが伝わる作例です。

光を受けた葉のつやと、落ち着いた背景のボケ。緑の濃淡が印象的な一枚です。
HELIOS 44M-4で撮影するときに意識したいこと
HELIOS 44M-4のようなオールドレンズで背景のボケを楽しむなら、被写体だけでなく、その後ろに何があるかにも注目してみるとよいでしょう。
例えば、木漏れ日や街灯、光を反射するものが背景にあると、光が玉ボケとして写る場合があります。
被写体と背景の距離を変えたり、撮影する角度を少し動かしたりするだけでも、ボケの形や大きさは変化します。
また、F2という明るい開放F値を持つため、絞りを開くことで背景を大きくぼかす撮影も楽しめます。
一方で、マニュアルフォーカスレンズのため、ピントは自分で合わせる必要があります。
SONY α7には、画面を拡大してピントを確認する機能や、ピントの合った部分を色で強調するピーキング機能が搭載されています。
こうした機能を活用すれば、人物の目元や植物の細かな部分など、ピントを合わせたい場所を確認しながら撮影できます。
手間は少しかかりますが、ピントを合わせる場所を自分で選び、背景まで含めて構図を考える。その過程も、オールドレンズ撮影の楽しみのひとつです。
日常の景色を、少し違った表情で
SONY α7とKMZ HELIOS 44M-4 58mm f/2の組み合わせで撮影された5枚の写真をご紹介しました。
人物の背後に広がる輪郭のある玉ボケ、街角での手前と奥の見え方、そして植物の質感。今回の作例には、被写体や背景によって変化するさまざまな表現が写っています。
特別な場所へ出かけなくても、木漏れ日や道端の植物、通り慣れた街角には写真になる風景があります。
いつもの景色を少し違った視点で撮ってみたい方は、オールドレンズを持って街を歩いてみてはいかがでしょうか。
SONY α7について
2013年11月に発売された、35mmフルサイズセンサーを搭載するレンズ交換式デジタルミラーレスカメラ。
有効約2430万画素の「Exmor」CMOSセンサーと、画像処理エンジン「BIONZ X」を搭載しています。
レンズマウントにはソニーEマウントを採用。対応する交換レンズを使い分けられるほか、マウントアダプターを介してオールドレンズを装着することもできます。
電子ビューファインダーやチルト式液晶モニターを備え、マニュアルフォーカス時にはピント拡大やピーキング機能を利用できます。
35mmフルサイズセンサーを比較的小型のボディに収めた、ソニーα7シリーズの初代モデルです。
幅・高さ・奥行:126.9mm×94.4mm×54.8mm
重量:約474g(バッテリー・メモリーカードを含む)
KMZ HELIOS 44M-4 58mm f/2について
旧ソ連のKMZ(クラスノゴルスク機械工場)で開発された、マニュアルフォーカスの標準単焦点レンズ。HELIOS 44M-4の開発は1981年に完了したと記録されています。
焦点距離58mm、開放F値F2の光学仕様を持ち、M42スクリューマウントを採用しています。
旧ソ連の一眼レフカメラ「ZENIT」シリーズなどに用いられたHELIOS 44シリーズの一モデルで、KMZ以外の工場でも同系列のレンズが製造されました。
背景の光点が輪郭を持った玉ボケとして写ることがあり、人物撮影や植物、街角のスナップなど、背景の表現も含めて楽しめるオールドレンズです。
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