Leica M6に、Leica NOCTILUX-M 50mm f/0.95 ASPH.を装着し、KODAK PROFESSIONAL PORTRA 800で夜の新宿を撮影しました。
F0.95という圧倒的な明るさを持つレンズと、ISO800のカラーネガフィルム。
撮影したのは、雨が上がったばかりの新宿です。
濡れた道路、ネオン、車のライト、行き交う人々。普段なら何気なく通り過ぎてしまう夜の街が、ファインダーを覗くと少し違って見えてきます。
Leica M6|撮ることに集中できるフィルムカメラ
Leica M6は1984年に登場した35mmレンジファインダーカメラです。オリジナルモデルは1984年から2002年までに約17万5,000台が生産され、2022年には現行モデルとして復刻されました。
シャッターを切るまでに、ピントを合わせ、露出を確認し、絞りやシャッタースピードを自分で決める。そして一枚撮れば、自分の手でフィルムを巻き上げる。
決して速さだけを求めたカメラではありません。
しかし街を歩きながら使っていると、その少しの手間が心地よく感じられます。
「ここを撮ろう」と決めてからシャッターを切るまでの数秒間に、構図を考え、人の動きを待ち、光を見る。その時間そのものがM6で撮影する面白さです。

NOCTILUX-M 50mm f/0.95 ASPH.|夜の光を写すための一本
今回組み合わせたNOCTILUX-M 50mm f/0.95 ASPH.は、2008年のphotokinaで発表されたMマウント用50mmレンズです。
「Noctilux」という名前は、ラテン語で夜を意味する「NOCTU」と光を意味する「LUX」に由来します。その名前通り、このレンズを象徴するのが開放F0.95という明るさです。
レンズ構成は5群8枚。非球面レンズやフローティングエレメントを採用し、最短撮影距離は1m、重量は約700g。決して小さく軽いレンズではありません。
しかし、ファインダーを覗いてピントリングを回し、浅いピントの中から被写体が浮かび上がってくる瞬間には、このレンズならではの感覚があります。
F0.95開放ではではピントの合う範囲、つまり「被写界深度」が非常に浅くなります。
そのため簡単なレンズではありません。けれど、きれいに撮ることだけではなく、どこにピントを置くかまで写真表現の一部になる。それがNoctiluxの面白さです。

作例レビュー|光が点ではなく、街の空気になる
夜の新宿を歩いていると、光源は一つではありません。
車のヘッドライト、信号、店舗の照明、液晶画面、看板のネオン。さまざまな色と明るさの光が同時に存在しています。
タクシーの車内を撮影した作例では、ピントが合っている部分以外の光が大きく柔らかく溶けています。
何が写っているのかをすべて説明するというより、そのとき見えていた光や空気そのものを残したような一枚です。

F0.95の魅力は、「暗い場所でも撮れる」というだけではありません。
ピントの合った場所と、その前後に広がる光との大きな差。それを写真として利用できることが、このレンズの大きな魅力です。
Portra 800|夜の街でも色を残せるフィルム
今回使用したPORTRA 800は、ISO800のカラーネガフィルムです。
KodakはPORTRA 800について、高感度ながら細かな粒状性、自然な肌色、広い露出ラチチュードを特徴として挙げており、必要に応じてISO1600への増感にも対応しています。
ISO800の感度とF0.95の明るさ。この組み合わせなら、夜の街でもストロボに頼らず、その場所に実際にある光を使って撮影しやすくなります。
今回の作例でも、店頭の白い光、赤や青のネオン、夕方の空、濡れたアスファルトの反射が一枚の中に共存しています。

フィルムの色は現像やスキャンによっても変化するため、すべてをレンズやフィルムだけの特徴として判断することはできません。
それでも、夕暮れから夜へ変わっていく街の色をフィルムに残すという撮影には、Portra 800の感度は非常に相性の良い選択肢です。
雨上がりだから見つかる写真
この日の撮影で特に印象的だったのが、水たまりです。
濡れた路面にカメラを近づけると、普段は地面でしかない場所に、もう一つの新宿が現れます。

歩いている二人の姿が上下に伸び、現実の人物と水面に映った人物が一枚の中で向かい合う。
さらに別の場所では、大きなカメラ店のネオンそのものが水面に映り込み、街が上下に二重になりました。

50mmは極端な広角でも望遠でもありません。
だからこそ、こうした場面では「何か特別なものを探す」というより、自分が立っている場所から見えている景色の中から構図を探すことになります。
M6を持って歩く楽しさは、こういうところにあるのかもしれません。
ガラス越しに見つけた、一瞬の重なり
街を歩いていると、ときどき狙って作ることのできない瞬間があります。
バスの窓越しに見えた人々、ガラスに映り込んだ街の光、車内と外の景色。

一枚の写真の中にいくつもの層が重なり、「車内なのか街なのか」が少し曖昧になる。
こうした瞬間を見つけたとき、ズームして整理するのではなく、50mmのまま目の前の景色を切り取る。その制限もまた、単焦点レンズでスナップする面白さです。
Leica M6 + Noctilux + Portra 800で夜を歩く
Leica M6、NOCTILUX-M 50mm f/0.95 ASPH.、そしてPORTRA 800。
軽量でも、オートフォーカスでもありません。F0.95開放で正確にピントを合わせるには集中力も必要です。
それでも、この組み合わせを持って夜の街へ出ると、普段とは違うものに目が向きます。
濡れた地面。ガラスへの反射。人と人がすれ違う瞬間。看板からこぼれる光。
カメラを持っていなければ、そのまま通り過ぎてしまったかもしれない景色です。
Noctiluxの魅力は、背景を大きくぼかすことだけではありません。
「暗くなってからも、まだ写真を撮り続けたくなる。」
それこそがLeica M6とNOCTILUX-M 50mm f/0.95 ASPH.を組み合わせる大きな楽しさなのではないかと感じます。
Leica M6 について
1984年に登場した35mmフィルムのレンジファインダーカメラ。
Leica Mバヨネットマウントを採用したレンズ交換式で、内蔵露出計により露出を確認しながら撮影できます。
ピント合わせはファインダー内の二重像を合わせて行い、シャッタースピードや絞りは手動で設定します。
機械式シャッターと手動巻き上げを基本としながら、TTL露出計を備えたM型ライカです。
幅・高さ・奥行:138mm×77mm×40mm(2022年再発売モデル)
重量:575g(バッテリーなし、2022年再発売モデル)
NOCTILUX-M 50mm f/0.95 ASPH.について
2008年にドイツ・ケルンで開催されたphotokinaで発表された、ライカMマウント用の50mm単焦点レンズです。
開放F値はF0.95で、レンズ構成は5群8枚。非球面レンズやフローティングエレメントを採用しています。
ピント合わせはマニュアルで、最短撮影距離は1m。ライカMバヨネットマウントと6bitコードを採用し、フィルターはE60に対応しています。
F0.95という大きな開放絞りにより、少ない光の中での撮影に対応するとともに、浅い被写界深度を活かした撮影ができるレンズです。
重量:約700g
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