広い空、遠くに続く山並み、視界いっぱいに咲く花々。目の前に広がる風景を、できるだけそのまま一枚に残したい。
そんな撮影のために生まれたのが、富士フイルムのパノラマフィルムカメラ「GX617 Professional」です。
今回は、FUJIFILM GX617 Professionalに「EBC FUJINON SWD 90mm f/5.6」を組み合わせた作例をご紹介します。
作例は一枚ですが、カメラの仕組みや6×17判ならではの特徴、専用レンズの仕様を掘り下げながら、その魅力をご紹介します。
FUJIFILM GX617 Professionalとは

GX617 Professionalは、1993年12月に発売されたレンズ交換式のパノラマフィルムカメラです。
35mmフィルムではなく120・220ロールフィルムを使用し、約6×17cmという横長の画面に風景を記録します。
実際の画面サイズは56×168mm。縦横比はちょうど1:3です。
一般的な35mm判(24×36mm)の1コマと比較すると、フィルム上の撮影面積は約11倍。単に横長にトリミングするのではなく、最初から広大な画面を使って撮影できるのが大きな特徴です。
120フィルム1本で撮影できるのは4コマ。
限られた枚数だからこそ、何を画面に入れ、どこに水平線を置き、いつシャッターを切るか。撮影前に構図をじっくり考える時間も、このカメラならではの楽しさです。
6×17判が生み出す、独特のパノラマ表現
GX617の魅力は、画角の広さだけではありません。
横方向に大きく広がる画面を生かして、主役となる被写体だけでなく、その周囲の景色や奥行きまで一つの構図に組み込めます。
たとえば、広い花畑と背後の山並みを同時に写したり、海岸線や街並みが左右へ続く様子を一枚に収めたり。
視線が自然と画面の端から端へ移動するため、通常の長方形フレームとは違った写真の見せ方ができます。
また、56×168mmという大きなネガは、風景の細部を記録するうえでも魅力的です。ただし、実際の仕上がりは使用フィルム、露出、現像、スキャンなどの条件によって変わります。
今回使用したレンズ:EBC FUJINON SWD 90mm f/5.6
組み合わせたのは、GX617専用の超広角レンズ「EBC FUJINON SWD 90mm f/5.6」。
メーカー資料による対角画角は89°で、6×17判の広い画面をカバーするよう設計されています。
35mm判のカメラでは90mmは中望遠に分類されますが、GX617の大きな画面では超広角として機能します。
焦点距離の数字だけでは画角を判断できないことも、中判・パノラマカメラの面白さの一つです。
レンズ構成は6群8枚、開放F5.6から最小F45まで絞りを設定でき、最短撮影距離は2.0m。
レンズにはコパルNo.0のレンズシャッターを備え、シャッター速度は1秒〜1/500秒とB(バルブ)に対応します。
さらに、広角レンズで画面周辺が暗くなる現象に対応するため、90mm用の専用センターフィルターも用意されていました。
これは画面の中心と周辺の明るさの差を整えるためのアクセサリーで、撮影目的に応じて使用を検討できます。
作例|花畑と山並みを一枚に収める

今回の作例では、画面左側に広がる黄色い花、右側を彩るオレンジ色の花、中央を奥へと延びる小道が印象的です。
その向こうにはゴンドラや山並みが見え、手前から遠景までの要素が横長のフレームに収まっています。
左右に広がる花畑によって風景の幅が伝わる一方、中央の小道が画面の奥へと視線を導きます。
空を大きく取り込んだ構図からも、この独特なパノラマフォーマットの特徴を感じられます。
作例を眺めていると、特定の一輪の花を主役にするのではなく、「その場所の風景全体」を作品として残すというGX617の楽しみ方がよく伝わってきます。
撮影の操作も、一般的なカメラとはひと味違う
GX617は、画角に合った専用の外付けファインダーを使用するカメラです。
ピントは距離を目測してレンズ側で設定する方式で、露出も撮影者が判断します。必要に応じて単体露出計などを使うことになります。
より厳密にピントや構図を確認したい場合には、別売のフォーカシングスクリーンも用意されていました。
フィルムの巻き上げは手動式で、1コマ進めるためにレバー操作を4回行います。
また、ボディ側の電磁式シャッターレリーズにはCR123Aリチウム電池2本を使用します。
オートフォーカスや自動露出に頼らず、一つひとつの操作を確認しながら撮影するタイプのカメラです。
広い画面の水平を整えたり、構図の四隅まで確認したりするためにも、風景撮影では三脚を活用すると撮影を進めやすくなります。
FUJIFILM GX617 Professionalの主な仕様
- 発売:1993年12月
- 形式:レンズ交換式パノラマフィルムカメラ
- 使用フィルム:120/220ロールフィルム
- 画面サイズ:56×168mm(6×17判)
- 撮影枚数:120フィルムで4コマ/220フィルムで8コマ
- 対応レンズ:90mm・105mm・180mm・300mm(専用レンズ)
- ピント合わせ:目測によるマニュアル設定
- フィルム巻き上げ:手動レバー式(1コマにつき4回操作)
- 電源:CR123Aリチウム電池×2(ボディ側電磁レリーズ用)
- ボディサイズ:279×114×92mm(幅×高さ×奥行)
- ボディ重量:約1,270g(電池除く)
EBC FUJINON SWD 90mm f/5.6の主な仕様
- 焦点距離:90mm
- 開放F値:F5.6
- 最小絞り:F45
- レンズ構成:6群8枚
- 対角画角:89°(6×17判)
- 最短撮影距離:2.0m
- シャッター:Copal No.0 レンズシャッター
- シャッター速度:1秒〜1/500秒、B
- フィルター径:77mm
- レンズサイズ:167×100×128mm(幅×高さ×奥行)
- レンズ重量:約1,050g
- 専用90mmファインダー:倍率0.5倍
- 専用センターフィルター:別売アクセサリーとして設定あり
まとめ|一枚の風景と、じっくり向き合うカメラ
FUJIFILM GX617 Professionalは、効率よく大量に撮るためのカメラではありません。
120フィルムでわずか4コマという制約のなか、広い景色をどう切り取るかを考え、一枚に集中するための道具です。
EBC FUJINON SWD 90mm f/5.6を組み合わせれば、花畑や山並みのように左右へ広がる景色を、6×17判ならではのスケールで記録できます。
パノラマフィルムでしか味わえない撮影体験に興味のある方は、ぜひ注目してみてください。
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