ライカの長い歴史において、一つの大きな転換点となった「Leica M EV1」。M型で長く採用されてきた光学レンジファインダーを搭載せず、ボディ内蔵型の高精細EVF(電子ビューファインダー)を採用した革新的なモデルです。
今回組み合わせたのは、広角レンズ「Leica Elmar-M 24mm f/3.8 ASPH.」。24mmという絶妙なパースペクティブと、歪みを極めて抑えた描写、そして画面全域にわたる均一な解像力を誇る一本です。
従来のレンジファインダー式M型では、24mmや21mmといった広角レンズの画角を正確に確認するには、外付けファインダーや、デジタルMではライブビューなどを使う必要がありました。その24mmの世界を、M EV1では内蔵EVFでダイレクトに覗き、意図した光と影をそのまま焼き付ける。
本記事では、都心の街を歩きながら撮影したモノクロの作例とともに、この組み合わせがもたらす撮影体験と描写力を徹底レビューします。
伝統のフォルムに宿る革新:Leica M EV1の佇まい
ライカらしい、無駄を削ぎ落とした端正なボディラインを受け継ぐ「Leica M EV1」。
従来のM型にあったファインダー窓などがなくなったことで、正面から見た印象はよりシンプルで精悍になりました。それでも、手にしたときの質感や佇まいには、しっかりとM型らしさが残っています。
大きく変わったのは、やはりファインダーです。
これまでのレンジファインダーではなく、EVFを覗きながら撮影するスタイルになったことで、構図やピントをより直感的に確認できるようになりました。特に広角レンズを使うと、その違いを強く感じます。
見た目は紛れもなくライカM。しかしファインダーを覗いた瞬間、そこにはこれまでとは違う撮影体験が広がります。
伝統的なデザインを残しながら、撮り方そのものを大きく変えた一台。それがLeica M EV1です。

レンジファインダー窓を廃し、無駄のないソリッドな佇まいを見せるLeica M EV1。
外付けファインダーからの解放。24mmという画角を覗き込む歓び
従来のM型ライカでは、24mmや21mmといった広角レンズを使う際、外付けファインダーや背面液晶で構図を確認する必要がありました。
また、40mmのように専用のブライトフレームがない焦点距離では、写る範囲を頭の中でイメージしながら撮影する必要があります。
M EV1なら、こうした制約から解放されます。
24mmの広い画角も、ファインダーを覗けば実際に写る範囲をそのまま確認でき、構図に集中してシャッターを切ることができます。
今回使用した「Elmar-M 24mm f/3.8 ASPH.」は非常にコンパクトで、M EV1との相性も抜群。
街を歩きながら気になった瞬間に構え、そのまま撮る。そんな軽快なスナップ撮影を楽しめる組み合わせです。
【作例】光と影が交錯する都市を切り取るストリートスナップ
日差しの強い都会の街に出ると、M EV1のEVFの見やすさをさらに実感します。
背面液晶では確認しづらい強い光と影の場面でも、ファインダー内なら明るさのバランスを見ながら、その場で露出を調整できます。
逆光の中を歩く人物を捉えた一枚では、強い光を残しながら暗部にも自然な階調が残りました。
横断歩道に伸びる影を撮影したカットでも、深い黒と明るい部分がしっかりと共存し、都市の強いコントラストを印象的に描いています。

強い逆光下でも明暗の階調が豊かに表現される。暗がりから光へと抜ける空間の立体感が際立つ。

強い日差しと横断歩道のコントラスト。ハイコントラストなモノクロ設定でもシャドウ部の階調が粘り強く残る。
研ぎ澄まされた歪曲収差の補正と、緻密なディテール描写
広角レンズで気になるのが、画面周辺の歪みです。特にビルが多い街中では、直線が不自然に曲がると写真全体の印象も大きく変わります。
Elmar-M 24mm f/3.8 ASPH.は、その歪みが非常に少なく、建物のラインを自然に描いてくれます。
交差点を渡る人物を捉えた一枚でも、背景のビルの窓や直線が画面の端まで素直に残り、広角らしい広がりを感じながらも不自然さはありません。
また、日の丸を掲げる場面では、布の柔らかな質感から背景の建物まで、硬くなりすぎない自然なシャープさで細かく描写しています。

逆光に浮かび上がるシルエットと、直線が心地よく伸びる近代ビルの外観。歪曲収差の少なさが画面に安定感を与える。

旗の布地が描くグラデーションと人物の引き締まったエッジ。質感描写の豊かさはライカならでは。
24mmのパースペクティブをダイレクトに操る快感
28mmより少し広く、21mmほど極端にならない24mm。街の広がりをしっかりと写しながら、自然な遠近感も残せる絶妙な画角です。
近くの被写体を大きく見せたり、奥行きを強調したりと、立ち位置やカメラの角度によって写真の印象が大きく変わるのも24mmの面白さです。
M EV1なら、EVFを見ながら四隅の入り方や画面全体のバランスをその場で確認できます。
24mmの広い画角を感覚だけに頼らず、見たままに整えて撮れる。この扱いやすさは、M EV1との組み合わせならではの魅力です。

四隅まで破綻のない均一な描写力が大空間のスケールを余すところなく伝える。
広角Mレンズの真価を現代に引き出す、至高のスナップパッケージ
Leica M EV1は、単にファインダーがEVFになっただけのカメラではありません。
M型らしいシンプルな操作感やMレンズの魅力はそのままに、これまでファインダーの枠に縛られていた撮影を、より自由なものにしてくれます。
今回使用したElmar-M 24mm f/3.8 ASPH.は、まさにその変化を実感できる一本でした。コンパクトで持ち歩きやすく、24mmの広い画角をファインダーでそのまま確認しながら撮影できる。その気軽さは、街を歩きながら撮るスナップと非常によく合います。
光や影、人の動きに気づいた瞬間にカメラを構え、見えた景色をそのまま切り取る。
M EV1とElmar-M 24mm f/3.8 ASPH.は、Mレンズで撮る楽しさに新しい可能性を感じさせてくれる組み合わせでした。
Leica M EV1について
2025年11月に発売された、ライカMマウントを採用するフルサイズのデジタルミラーレスカメラです。
M型ライカとして初めて電子ビューファインダー(EVF)を内蔵し、ファインダーを覗きながら実際に写る範囲や明るさを確認できるのが大きな特徴です。
約6030万画素のフルサイズCMOSセンサーを搭載し、ライカMマウントの交換レンズを使用できます。ピント合わせはマニュアルで、ピント位置を確認しやすくする拡大表示やフォーカスピーキングにも対応しています。
従来のレンジファインダー式M型ライカとは異なる方法で構図やピントを確認でき、超広角や望遠、マクロレンズなどでもファインダーを使った撮影がしやすい設計となっています。
幅・高さ・奥行:138.8mm×80.3mm×38.5mm
重量:約402g(バッテリー含まず)/約484g(バッテリー含む)
Leica Elmar-M 24mm f/3.8 ASPH.について
2008年に登場した、ライカMマウント用の広角単焦点レンズです。24mmの広い画角を持ち、風景や旅行、スナップなど幅広い撮影に対応します。
開放F値はF3.8で、ピント合わせはマニュアル。最短撮影距離は0.7mです。
コンパクトな設計を特徴とし、絞り開放から細かなディテールと高いコントラストを得られることが公式に案内されています。デジタルM型カメラに対応する6ビットコードも備えています。
広い範囲を一枚の写真に収められる24mmの画角と、小型の鏡筒を組み合わせたM型ライカ用広角レンズです。
・フィルター径:E46(46mm)
・最大径×全長:約53mm×40.6mm(フードなし)
フード装着時の全長:約56.6mm
・重量:約260g
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